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横谷 明徳
放射光, 17(3), p.111 - 117, 2004/05
放射線によりDNA分子中に生じる塩基の酸化的損傷の前駆体を明らかにするため、われわれはSPring-8の軟X線ビームライン(BL23SU)に設置された電子常磁性共鳴(EPR)装置を用いて、酸素及び窒素K吸収端領域におけるDNA塩基ラジカルの生成機構について調べている。DNA塩基の一つであるグアニン塩基に対するEPRの「その場」測定から、ビーム照射時にのみ現れる短寿命のラジカルが生成することが見いだされた。このラジカルはグアニン中にただ一つしかない酸素(カルボニル酸素)の1s*共鳴によりその収率が顕著に増えた。一方ビーム照射を停止しても残存する安定なラジカルも生成し、これは線照射などで既に報告されているグアニンカチオンラジカルと推定された。このカチオンラジカルは短寿命ラジカルとは異なり、酸素の1s*共鳴により逆に収率が減少した。以上の結果から、オージェ終状態からさらに競争的にこれら二つのラジカル過程を経て化学的に安定なグアニン損傷に至ることが示された。
横谷 明徳; 赤松 憲*; 藤井 健太郎
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 99, p.366 - 369, 2003/01
これまでの放射光を用いた生体分子損傷研究では、おもにエンドポイントである反応生成物に主眼が置かれてきた。一方軟X線光反応を起こした直後の反応中間体の一つとして推測されるラジカル分子種については、ほとんど知見がない。この理由は、放射光ビームラインにラジカル分子種をその場"in situ"測定するための装置がなかったためである。不対電子を有するラジカル分子種はイオンと中性の両方の場合があり、また照射試料表面から脱離せずにバルク中に残る場合も多いと考えられる。このため通常のイオン分光等の測定のみでは、その全貌を追跡することが困難である。このような状況を踏まえ、われわれはラジカル測定のための電子常磁性共鳴装置を備えた実験ステーションを、これまでSPring-8に立ち上げてきた。本講演では、DNA構成塩基を試料として試験的に試みた幾つかのラジカル測定に成功したので、これを報告する。
宇佐美 徳子*; 横谷 明徳; 石坂 昭三*; 小林 克己*
Journal of Radiation Research, 42(3), p.317 - 331, 2001/09
被引用回数:8 パーセンタイル:28.35(Biology)リン原子のX線吸収により酵母細胞中に生じるDNA損傷の特性を、リンK殻のX線共鳴吸収波長(2153eV)及びこれよりも低エネルギー(2147eV)の単色化した放射光軟X線を用いて調べた。DNAの2重鎖切断(dsb)の相対修復率は、温度感受性dsb修復欠損突然変異株()及び野生株を用いて測定した。に生じた損傷のうち修復された割合、すなわち経路により修復され得るdsbの相対収率は、リンK殻X線共鳴吸収により影響を受けなかった。野生株に生じた損傷の修復に関しても、照射後ただちに培養した細胞と非栄養培地中で80時間保持した後に培養した細胞のそれぞれの生存率を比較することで調べた。液体保持回復処理を行った細胞の生存率の回復は、照射したX線のエネルギーに依存した。これらの結果は、リンの内殻X線吸収によりDNA中に修復され難い損傷が生じるが、その割合は小さいことを示してる。
大塚 昭夫*; 川面 澄; 藤本 文範*; 小牧 研一郎*; 小沢 国夫; 寺沢 倫孝*
Journal of the Physical Society of Japan, 53(3), p.1001 - 1005, 1984/00
被引用回数:5 パーセンタイル:52.62(Physics, Multidisciplinary)2MV VdG加速器の重イオンを用いてBeから発生するK及びK超衛星線を結晶分光器により測定し、BeのK殻電子の単一及び二重電離断面積を求めた。入射イオンとしては0.3~1.3MeVのC,N,O及びNeイオンが用いられた。実験データはNe+Beの系を除いては2p-2pбカップリングによる分子軌道モデルによって説明された。
川面 澄; 大塚 昭夫*; 小沢 国夫; 藤本 文範*; 小牧 研一郎*; 寺澤 倫孝*
Nuclear Instruments and Methods, 170(1-3), p.265 - 268, 1980/00
抄録なし
川面 澄
Rev.Phys.Chem.Jpn., 47(2), p.53 - 68, 1977/02
H(0.3-1.8MeV),He(0.25-2.0MeV),N(0.3-1.1MeV)及びAr(0.3-1.8MeV)イオン衝撃によるBe,B及びO原子の単一及び二重K殻電離断面積はBraggスペクトロメータを用いて測定した。単一のK殻電離断面積については、軽イオンの場合にはクーロン励起によるBEAと良い一致をする一方重イオンの場合には電子昇位模型によって説明される。軽イオン衝撃の二重K殻電離断面積がE/U=1で最大になりかつ、Z依存性を示すことを初めて観測した。
川面 澄
Rev.Phys.Chem.Jpn., 47(2), p.69 - 79, 1977/02
H(0.3-1.8MeV),He(0.25-2.0MeV),N(0.3-1.1Mev),Ne(0.3-0.85Mev)及びAr(0.3-1.8MeV)イオン衝撃によって、Be及びBeOのBe KX線B及びBNのB KX線及び酸化物のO KX線スペクトルとCr,Mn,Fe及びCoのL X線スペクトルを高分解能のBraggスペクトロメータで測定した。Kの主、衛星及び超衛星線やその遷移エネルギーは化学結合や入射イオンによって大きい影響を受ける。特に重イオンで励起された場合にこの効果は著しい。更に、K及びLX線の多重内殻電離効果は入射イオンの核電荷に大きく依存することが示された。